日本人類遺伝学会ゲノムメディカルリサーチコーディネーター(GMRC)制度について
2025年12月1日
GMRCとは
GMRCは、ヒトゲノム・遺伝子解析を伴う研究について、我が国では、文部科学省、厚生労働省、経済産業省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(2001年3月29日制定、2021年6月30日廃止)に基づき、適正な研究の実施を支援するために設けられた制度です。日本人類遺伝学会が2007年度に創設し、日本疫学会との連携のもとで運用され、2025年度に廃止されました。
制度設計の根拠
世界医師会「ヘルシンキ宣言 人間の参加者を含む医学研究のための倫理的原則」では、研究参加へのインフォームド・コンセントを求める際、医師または他の研究者は、参加候補者が自身と依存関係にある場合、または強制されて同意する可能性がある場合は特に注意を払うこと、またこうした状況では、インフォームド・コンセントは、この関係から独立した適切な有資格者が担う必要があることを定めています。
また、文部科学省、厚生労働省、経済産業省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(2021年6月30日廃止)では、インフォームド・コンセントを担当する可能性のある者として、「試料・情報の提供が行われる機関の研究者等のうち、研究の内容及び意義等について十分に理解している者」(第3 7(6))、「当該機関の研究者等以外の者(履行補助者)」(第3 7(7))を規定していました。
そこで、日本人類遺伝学会では、インフォームド・コンセントに関連する業務の基本となる教育の機会を提供し、「ゲノムメディカルリサーチコーディネーター (GMRC)」と名付け、認定する制度を設けました。
講習会・認定試験
GMRCに認定されるには、講習会の講義を受講後、認定試験を受験し、合格しなければなりませんでした。受験資格は成人以上で日本語が堪能である以外に厳密な条件はなく、インフォームド・コンセントに関する経歴などがなくても受験は可能でしたが、今後、そのような業務に就く予定のある方、また可能性がある方に受験いただくことを推奨していました。
GMRC認定には「GMRC」と「GMRCシニア」の2つのカテゴリがありました。「GMRCシニア」はIC実施実績が100件以上の方が受験可能としていました。また「GMRCシニア」を受験される方は、CBT試験に加え小論文形式のレポートが課されていました。
認定者・更新者数
図1に示すように、2008年度から2022年度まで講習会・認定試験が行われました。この間に、「GMRC」580名、「GMRCシニア」134名、計714名の方が認定されました(「GMRC」から「GMRCシニア」に移行した方を含む)。GMRCの認定は5年間有効となり、所定の単位を取得することによって資格の更新が可能とされていました。
図1 GMRC認定制度合格者数の年次推移

制度廃止と永久称号について
制度の末期において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究が特別なものではなくなった一方、大規模な研究が減少して来ました。また、研究の成果が診療で活用されるようになり、結果の説明等では医療行為を伴う場面が増え、がんゲノム医療コーディネーターの養成等などが始まり、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に特化したインフォームド・コンセントの専門家の役割が減って参りました。
そこで、2025年、日本人類遺伝学会理事会では、本制度が一定の役割を果たしたと判断し、本制度を廃止する決定をしました。2025年度に有効な資格を持っている認定者211名には、永久称号として認定証が発行されています。
GMRC制度は廃止されましたが、制度設計の根拠となったインフォームド・コンセントの大切さは、今も変わりません。今後、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の成果は、ますます予防、診断、治療で活用されるようになります。様々な現場でGMRC認定者が活躍することを願ってやみません。
以上
文責 武藤香織(GMRC制度委員会委員長)